私たちは、このプロジェクトの第一歩として福島第一原発の事故から12年目にあたる2023年3月、法人化と同時にウルシの苗木500本を阿武隈の二つの地域に植栽しました。しかし、その木から漆が採れるようになるまでには15年~20年という長い時を待たなくてはなりません。しかも、それだけの時間をかけても、一本のウルシの木から採れる漆の量はたったの200CCにすぎません。
「待つ時間」と「採れる量」という、この二つの事実は一体何を意味しているでしょうか? 漆を採ったあとウルシの木は伐倒されますが、この切り株から新たな枝葉がのび、長い時間をかけて再び漆が採れるようになります。こうしてウルシの木は、採取と伐倒と萌芽を繰り返しながら何世代も循環していくのです。
しかし、生業として成立するような途切れることのない循環をさせていくためには、毎年、しかも数千本の単位で植え続ける必要があります。さらに植栽した木が育っていくためには、夏の炎天下での下草刈りや芽欠き・施肥・害虫対策といった管理もしていかなくてはなりません。
山の再生には長い時間がかかります。その時間にあわせてお金も労力も必要になります。「そんな孫子の代のことまで責任が持てるのか?」と言われるかもしれません。しかし、原発事故以降、阿武隈の里山がおかれた状況を考えれば、何もしないで「見過ごす」ことの方がはるかに無責任ではないでしょうか?
2023年の春、私たちは、この息の長い困難な取り組みに最初の一歩を踏み出しました。国や行政が持っている力と比較すれば、私たちができることは些細なことにすぎません。しかし、フクシマに心を寄せる私たち一人一人の意志の力を一つに集めることができれば、「牛の背」の未来に一本の獣道を作ることは可能だと確信しています。
私たちが基本とする考えは、この項の[1][2][3]に述べてあります。植栽地の選定から植栽、管理に至るまでの活動費用は無報酬を前提に各自の自主財源で賄いますが、会員の皆様からの会費は主に苗木代として使わせていただきます。 現在のウルシの苗木代一本1000円前後を考えれば、個人会員の方々の年会費 5000円は一人5本分ほどにしかすぎません。 しかし、この 5本分を生業化が可能な循環ができるようになる 20年先まで支え続けていただきたいのです。
そこまでくれば、「牛の背」に植えたウルシの木々は、伐採と萌芽を繰り返しながら、人間の一生を遥かに超え何世代にも渡って循環し、この国の伝統的文化の一つでもある「漆」を私たちに提供し続けてくれます。その時、私たちは初めてこのウルシのために土地を提供してくれた人、苗木代を出してくれた人、植栽をしてくれた人、植栽後の管理をしてくれた人、漆を採取してくれた人、採取された漆を利用してくれた人など、この「ウルシのサイクル」に関わった全ての人たちと「牛の背からの贈り物」を分かち合うことができるのです。
先の長い活動です。でも今始めなければ20年後はありません。私たちの考えと行動に、あなたのご賛同をいただけるのなら、どうかこのプロジェクトの会員となり、私たちと一緒にあなたの意志の旗を「牛の背」に立てください! そして、地元の方々と共にこのウルシの森を育ててください!
(一社) 阿武隈牛の背ウルシぷろじぇくと